―― あとがき ――
古い物語は、そのままの形で現代まで語り継がれる事はあまりありません。
長い年月の中では技術無き写本により内容が欠落・変質してしまったり、
時代背景に合わせて意図的に改変されてしまったりと……
実は原初の姿を保った物語とは貴重な存在だったりします。
架空の物語とは、語り手の内にある知識や記憶など様々な因子が原点となり紡ぎ出されるものですが、
それらの中でも人の心を大きく動かしやすいのは、同じく人である語り手当人の心を動かした何かが原点となったもの……
特に当人の直接体験というノンフィクション、史実から導き出された物語です。
原初の物語があるのならば人は知りたいと思うように、
さらにその物語の原点となった『何か』があるのならば、やはり興味は尽きない事でしょう。
この物語の演出として各話冒頭に引用した新約聖書などにおいても、
元となった何らかの史実が――今や誰も知る事のない史実があったのでは……
と想いを馳せてみるのも面白いのではないでしょうか。
2003年9月 樹ノ崎光弐
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